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過越の「子羊」が語りかける、もう一つの物語
過越の「子羊」が語りかける、もう一つの物語 出エジプト記12章3節から5節にかけて、イスラエルの共同体に過越の子羊を準備するよう命じられる箇所が登場します。 この箇所で繰り返し用いられる「子羊」という言葉、ヘブライ語では「セー」(שה)です。原文をひもとくと、この「セー」という単語は、単独では「一匹の羊」を指しますが、文脈によっては「羊の群れ」全体を象徴することもある、実に奥深い表現であります。 また、3節で「一軒の家に一匹の子羊」と命じられながら、4節では「家の人数が少ないときは、隣の人と一緒にとる」と、その柔軟な運用が示されております。この「家」という単位と「人数」という個の視点が、律法の中でどのように調節されているか。ラビたちはこの点に、単なる儀礼の枠を超えた深い示唆を見出してまいりました。 11世紀フランスのラビ、ラシ(シュロモー・ベン・イツハク)は、この過越の子羊に関する一連の箇所を解説する際、ある一つの動詞に鋭く焦点を当てます。 それは4節にある「見積もる」という言葉です。家の人数に応じて子羊を「見積もる」という、一見すると事務的なこ

石川尚寛(Naohiro Ishikawa)
4月1日読了時間: 4分
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